2016年3月13日に開催された第10回哲学カフェ

日時:平成28年3月13日(日曜日) 13時〜15時
場所:サロンド冨山房Folio
記録:哲学カフェ事務局
テーマ:『日本人の心』
ゲストスピーカー:東洋大学 吉田善一教授&アメリカ人禅僧 ミラー和空

事務局スタッフによるカフェ所感:
 3月13日の哲学カフェは、東洋大学教授の吉田善一教授と、アメリカ人禅僧のミラー和空先生をお招きして、お二人と参加者が対談する形式で行われました。今回のテーマは、「グローバル社会の中で誇れること、足りないことを考える」です。

 一般的に、日本人の誇れるものとして「真面目さ」「勤勉さ」「几帳面さ」などが、日本人に欠けているものとして「積極性」などが挙げられます。

 今回のカフェに参加することによって、私は、これらのイメージは正解ではあるけれど、完全に正解ではないと感じました。日本人が誇れるものは、確かに「真面目さ」「勤勉さ」「几帳面さ」と結びついてはいますが、それだけでは片付けられない深さがあると感じたからです。

 そもそも、「日本人らしさ」とは本当にあるのでしょうか。

 吉田教授は、日本人らしさの例として石田梅岩の「商人道」と、それを受け継いだ「近江商人の考え」を挙げられました。これは、「商売は自分のため、金もうけのためだけに行うものでなく、顧客のために行い、利益は社会のために還元するべき」とした考えです。

 「三方よし」(顧客、自社、社会すべてを満足させるために仕事をする)というのは、このことを表現した言葉であるということ。これは、今の日本人の仕事観にもよく表れていると思います。仕事は自分のためだけでなく、顧客や社会のためにするべきであり、その実現のために人の道を学ぶという考えは、今も伝統的に私たちの中に深く根付いていて、それが日本人の特徴の1つになっていると感じます。

 次に、生産現場の例を挙げます。

 自動車は日本の主要産業の1つで、日本人らしさ、日本文化の1つとしてよく挙げられる事柄です。生産現場では、ミリ以下の緻密な仕事、品質重視で仕事が行われています。

 また、「すりあわせ」ができることも、日本人の特徴の1つ。自動車はいくつもの部品を組み合わせて作りますが、各部品は、それぞれ担当者が違います。バラバラに部品を作っていても、部品を組み立てると、きちんと自動車になるということ。つまり、実際に組み立てを行う前でも、自分の作る部品が全体の中で、ほかの部品と組み合わさった際にどうあるべきかということを想像する力があるということになります。

 ところで、このような文化や日本人らしさは、どこから生まれてくるのでしょうか。

 例えば、上のような生産現場に外国人技術者を入れ、長い間その中で仕事をすれば、その外国人技術者は日本人と同じような仕事をするようになるとのこと。反対に、日本人が外国の縛りの緩い会社で仕事をすれば、縛りの緩い仕事ぶりになっていくとのことでした。

 そこで、「日本人という区分は意味を持つのか」という問いに立ち返ります。

ミラー和空氏が参加者に向けて「日本人であることを誇りに思うか」という問いを投げかけると、それに対して「誇りに思う」と答える方はたくさんいました。その理由は、豊かな土地であること、食べ物、文化など、様々でした。

 ところが、改めて「日本人らしさって何?」と聞かれても、なかなか答えられません。曖昧なイメージや答えはあるものの、突き詰めていくとカタチがなく、かつ存在するかどうかも曖昧になっていくようです。

 そこで私が感じたことは、「日本を誇りに思う理由は、今まで育ってきた過程の中で総合的によかった、幸せだったと感じていて、それを実感する舞台となったのが日本だったから」ということでした。

 アメリカで様々な国の方と過ごされた経験がある参加者は、「重要なのは、国の違いではなく、各個人の生い立ちの違い」と話していました。それが、文化的な違いなどと深く関係し、国ごとの分類や区別に結びついていくという見解です。

 日本人らしさは、確かにあります。具体的には、私たちが今まで過ごしてきた生活の中で学び、感じ、身に付けてきた「商人道」のような伝統であり、過ごしてきた環境であり、形成された性格でもあります。それが、現在時点では「真面目」「几帳面」「品質主義」といった形で具現化し、ある場面では「良い点」、ある点では「悪い点」といわれているのではないでしょうか。

 もしかしたら、この先、環境が変化し、日本人らしさの定義も変わるかもしれません。しかし、日本人らしさが環境、伝統等である、すなわち過去と現在の要素を織り合わせてできるものである以上、現在や未来が変化しても、過去から受け継がれたものがすべて消えるわけではありません。
 これからも同じような形で徐々に「日本人らしさ」は形を変えていくのではないでしょうか。

 

2016年3月13日 哲学カフェ開催します!

次回のカフェの詳細が決まりましたので、お知らせします。次回のテーマは「日本人の心」。次回は、東洋大の吉田先生と、フリー禅僧のミラー和空さんがお話します。そのあと、ミラーさんがあのサンデル教授のようにファシリテーターをされるとのこと。はじめての試みですが、これこそ哲学カフェのスタンダードな形式ですので、ぜひ体験してみてください。

1.日時
平成28年3月13日(日曜日) 13時~15時

2.場所
千代田区神田神保町1-3 冨山房ビルB1
「サロンド冨山房Folio」 電話 03-3291-5153

3.参加費用
大人1,000円 /学生500円(ドリンク付き)

4.内容およびテーマ
『日本人の心』
「和の人間学」の著者である東洋大学の吉田善一教授とアメリカ人の禅僧 ミラー和空さんをお迎えして、グローバル社会において日本人が誇れること、日本人に足りないことを考えます。

5.ゲストスピーカー 
東洋大学 吉田善一教授
アメリカ人禅僧 ミラー和空

6.事前予約
電話/03-3291-5153  電子メール/folio@fuzambo-intl.com

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2016年1月17日に開催された第9回哲学カフェ

日 時:平成28年1月17日(日)PM13:00〜15:30
場 所:サロンド冨山房Folio
記録:哲学カフェ事務局
テーマ:『命の始まりと命の終わり〜生殖補助医療と尊厳死・安楽死について考える』
ゲストスピーカー:戸松義晴先生(浄土宗心向院住職・国際医療福祉大学特任教授/東洋大学文学部 現代に生きる仏教を講義)

内容:

【形式】
ゲストスピーカーである戸松義晴先生の講義を聞いた後、テーブルごとに意見交換

【タイムスケジュール】
13:10〜 スタート ゲストスピーカーの話(スライドを見ながら)
14:30〜 休憩
14:35〜 各テーブルにて話合い(5テーブル)※ゲストスピーカー戸松義晴先生が各テーブルを回り 意見交換
15:15〜 宗教界への質問・要望 ※戸松義晴先生より「宗教界に対する批判や要望を聞きたい」という要望があり、4名の方が意見を述べた
15:30頃終了

【戸松先生のお話】
1. 仏教における死生観(五蘊仮和合/仏教における生の概念/仏教における死の概念/輪廻転生/人のいのちの始まりをどうとらえるか/生命科学への態度/体外受精の許容度/代理出産の許容度/法律整備の賛否/事実告知と出自を知る権利)
2.生殖補助医療について(宗教界での議論/生命倫理問題への宗教教団の対応に関するアンケート調査結果/生殖補助医療に関する調査について/人口妊娠中絶について/出生前診断について/商業化する海外の代理出産/卵子凍結新について/法制化について/事実告知と出自を知る権利)
3.週末期医療と尊厳死・安楽死(尊厳死と安楽死/患者・家族の思い/死に直面した時、宗教は心の支えになるか/尊厳死立法に宗教界は…/法制化の問題点/延命治療の希望/尊厳死の許容度・安楽死の許容度/最後の選択権法案/「もう死にたい」)

【某テーブルで話し合った内容】
今と昔を比べると、今は「死」が生活から離れてきている。人とのつながり方も変わってきているが、それは社会制度上、ならびに家族のあり方の変化。「個人」に焦点があたったのは近代で、それ以前は家制度があった。そもそも「いのち」とは自分のものなのか、社会のなかの自分なのか。他人主体で考えているのではないか。

【宗教界に対する批判や要望】
・お坊さんは、死後のことのみではなく、人世の生き方を説いてほしい。
・残された家族の生き方についてお話しするには、その家族と日頃から関わる必要があるのでは。

現代版 哲学堂の歩き方

 今回は哲学カフェ開催のお知らせではありませんが、当カフェに関連する情報をお送り致します。

 ご存じの方もいらっしゃると思いますが、中野区にある「哲学堂公園」は春は桜の名所でもあり、また普段は思索にふけりながら、ぶらぶらするには恰好の散歩道でもあります。

 中野区で昨年から哲学堂公園をより認知してもらうために『東京人』の増刊号で「哲学堂公園」が特集されています。哲学堂公園の特集ではありますが、井上円了についても各方面から記事が掲載されておりますので、大変興味深いものがあります。井上円了とは当カフェに支援をいただいている東洋大学の創立者でもあります。書店にお立ち寄りの際は手に取ってご一読下されば幸いです。

 

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東京人2016年2月増刊

  なお、次回の哲学カフェは3月13日(日)を予定しております。詳細は後日連絡をさせていただきます。

 

2016年1月17日 哲学カフェ開催します!

次回のカフェの詳細が決まりましたので、お知らせします。

今回のカフェでは、人の誕生と、やがて誰もが直面する死をテーマに、参加者のみなさんと一緒に話し合いながら、命の問題について考えていきます。ご興味のある方は、ぜひお気軽にご参加ください!

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  1. テーマ:命の始まりと命の終わり〜生殖補助医療と尊厳死・安楽死について考える
  2. 日時:平成28年1月17日(日)13時~15時
  3. 場所:千代田区神田神保町1-3 冨山房ビルB1
  4. 参加費用:大人1,000円 /学生500円(ドリンク付き)
  5. ゲストスピーカー:浄土宗心向院住職 戸松義晴氏
  6. 事前予約:電話/03-3291-5153  電子メール/folio@fuzambo-intl.com

2015年11月8日に開催された第8回哲学カフェ

日時:平成27年11月8日(日)13:00〜15:00
場所:東京都千代田区神保町「サロンド富士房folio」
記録:哲学カフェ事務局

 本日は、ゲストスピーカー水城ゆうさん(作家・ピアニスト)による「親密な人間関係におけるコミュニケーションを考える」をテーマに哲学カフェを開催しました。

 カフェは、1. 自分と大切な人との関係の現状の確認のための議論、2. 水城さんのお話、3. 質問 4. 水城さんのお話を踏まえて思ったことを話うための議論という4部構成で進められました。

 最初に各個人にとっての大切な人はだれか、その人との関係はどうか、問題はないか、もっと良くするためにはどうしたらよいかといったことを参加者同士で話し合いました。
 私の所属するグループでは、主に、家族や友人を大切な人と挙げている人が多く、自分が何をしてほしいかが相手に十分伝わっていない、相手のしてほしいことが十分に理解できていなくてうまくいかないことがあるといったことが意見として出ました。
 その原因として「言葉にしていなくても理解しているだろう」、「伝わっているだろう」、「わかっていて当然」という考え・思いがそれぞれの中にあり、十分に言葉を交わしていないということが挙げられました。
 同時に、その相手を形作っているもの(文化・考え・信仰等)を理解する努力も必要ではないかという意見も出ました。

 その後、議論を踏まえ、水城さんから共感的コミュニケーションをもとにした相手との関係の改善・向上についてお話をいただきました。
 大切なことは、自分の中にある感情やどうしたいのか、どうしてほしいのかというニーズを事実や行動から理解して相手に伝えることです。
 そして、そのニーズを満たすことの責任は自分にあります。ですので、自分がどうしてほしいのかを伝えたうえで、相手がそのニーズを満たしてくれなかったとしても相手は悪くありません。そのニーズを別の方向で満たすことを考える必要があります。
 反対に、相手がどうしてほしいか伝えてきた場合にも、それを無理をして満たさなくてもよいのです。

 このように、感情・ニーズを理解し、それを相手に伝えることを日常生活の中に織り込むことで相手との関係は劇的に良くなるそうです。

 その後の質問では、「共感的コミュニケーションの具体的な日常の生かし方」や、「どうしても相手との関係がうまくいかない場合は距離を置く選択もあるか」等、さまざまな質問が出ました。

 そして、最後に水城さんのお話を受け、グループで思ったことを話し合いました。グループ内では、ニーズの種類とそれを伝えることについて主に話し合いがなされました。
 感情・ニーズは不満、悲しみや「〜してほしい」といったものだけでなく、満足、嬉しさや「〜してくれてありがとう」といったプラスのものもあります。プラスのものを積極的に伝えたり、プラスの言葉とともに「〜してほしい」といったニーズを伝えたりするとより効果的ではないか等といった意見が出ました。


 今回のカフェでも、活発に意見が交わされました。そして、考えるだけではなく、身近で実践的なテーマを設定したことで多くの方が日常で生かそうと、積極的に議論し、お話を伺い、質問をしていました。
 議論等をする参加者の方の顔もイキイキとしていて、中には気づいたことやお話で伺ったことを早速実践してみようと決心された方もいらっしゃいました。

 2時間という時間の中で、みなさん積極的にイキイキと参加してくださり、それぞれに気づいたこと、学んだことがあった様子でした。さらに、考えるだけで終わるのではなく、学んだことや気づいたこと、お話いただいた共感的コミュニケーションを、日常で実践していくことで、たくさんの人間関係を改善・向上したり、人間関係やコミュニケーションのことなどを更に考えることにつながれば尚良いと思います。

 

 

2015年11月8日 哲学カフェ開催します!

次回のカフェの詳細が決まりましたので、お知らせします。

1.内容

 あなたにとって大切な人を、知らず識らずのうちに傷つけていませんか? 今回は、親密な人間関係におけるコミュニケーションについて考えていきます。

★ゲストスピーカー水城ゆうからのコメント

 共感的コミュニケーションは、アメリカの心理学者マーシャル・ローゼンバーグ(2015年没)が提唱し、体系化したNVC(=Nonviolent Communication/非暴力コミュニケーション)をベースにしたコミュニケーション体系です。
 私は2007年にNVCに出会い、人生が一変しました。それまでの競争的・評価的・消耗的人生から、共感的・創造的・持続的な人生へと舵を切ることができたのです。
 共感的コミュニケーションではお互いの価値観を尊重しあう思いやりのある関係性を作り、争いのないクリエイティブな場をもたらします。それゆえにいま、これを学ぶ人が世界中で増えています。教育現場、紛争現場、そして先鋭的な企業などでも取りいれられています。
 私はこれを、日本の風土や国民性に落としこんだ形で、多くの人に知ってもらう活動をおこなっています。

2.日時
 平成27年11月8日 13時〜15時

3.場所
 千代田区神田神保町1-3 冨山房ビルB1 「サロンド冨山房Folio」

4.参加費用
 大人1,000円 /学生500円(ドリンク付き)

5.ゲストスピーカー

 作家・ピアニスト 水城ゆう(MIZUKI Yuu website

6.事前予約
電話/03-3291-5153
電子メール/folio@fuzambo-intl.com

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