2017年6月11日に開催された哲学カフェ

日時:平成29年6月11日(日)13時〜15時30分
場所:サロンド冨山房Folio
ゲストスピーカー:井上円了哲学塾三期生 新妻弘悦
テーマ:「あなたは空気を読めていますか?」

【前半】

ゲストスピーカー新妻さんのトークからスタート。まず、2017年2月28日の朝日新聞朝刊に掲載された岩手の高校生Nさんの記事を紹介。

1年生のある日、授業中に大きめの地震があった。揺れが治ると「3・11」の話題になる。当時の怖かった話を口々に話す中、私は「おばあちゃんも死んじゃった」と言った。すると、全員がシーンとなった。あれ、わたし、空気読めてない(記事の概要)

新妻さんは「この程度でクラスで浮いてしまうのか?」と疑問を提示。「友だち幻想」(菅野仁)や「やさしい関係」(土井隆義)、「若者まるわかり調査2015」(電通)などを引用しつつ、「空気とはなにか」と話す。その後、戦艦大和の例や「日本語は空気が決める」などから、「日本語は相手を慮るために主語や目的語をできるだけ言わずに済まそうとする傾向がある」という見方を示した。

では、先述の記事にあった学生は、「正体がわからないからこそ、圧倒的な力を持つかもしれない空気」を打破するためにどうしたらいいか。その方法として、新妻さんは「多くのコミュニティと緩く所属する」「技術としての対話の必要性」「空気を相対化する」「日本語を変える(たとえば敬語で議論するとか)」という案を示した。

その一方で、「人工知能にとって変わられない仕事」とは「空気を読むことのできる仕事」ではないかという可能性も示し、「空気を読めることも重要なのでは」ということも検討。その上で、参加者に2つの問いを投げかけた。

Q1. あなたは、岩手の高校生Nさんの件をどう思いますか?
Q2. 「空気を読む」ことに関して、疑問点、グループで話したいことを書いて下さい。

【後半】

テーブルトーク。いつもより少人数だったので、1テーブル4〜5名で話をした。各テーブルで話された内容は、以下の通り。


Q1 あなたは、岩手の高校生Nさんの件をどう思いますか?

  • 高校生Nさんは単に事実を話しただけ。空気が読めていないというのは解釈。
  • 空気が読めているかどうかは、誰が判断する?
  • 空気が読めない人はいない。読み方が間違っているだけ。
  • 本音を吐きにくい環境があったのではないか。
  • 時が経てば空気も変わる。待てるなら待つ、待てなければ別の場所に移動。
  • みんなで「怖かった」話をしているとき、フリマのようにお互いに少しずつハードルをあげて楽しんでいたのに、最強ワード「死」が入った発言で一気にハードルがあがり、みんながっかりしただけなのでは。

Q2 「空気を読む」ことに関して、疑問点、グループで話したいこと

  • 場所によって空気は異なる。
  • 家族、会社、学校、町内会などそれぞれのコニュニティーにはそれぞれの空気があり、同調圧力が働くケースが多い。そのメリット・デメリットを考えるべき。
  • 空気を読むって、相手を思いやることなのでは。
  • 空気を読んだ後、どうするかが大事。
  • 日本語はハイコンテクストカルチャーズ。だから文脈を読むのは難しい。

運営スタッフが参加した1つのテーブルでの話の流れは、以下の通り。

 本音を語ることができず、同調を求められる雰囲気、それは悪い空気であり、逆に本音を語ることができ、同調圧力が低い雰囲気、それは良い空気である。その空気を作り出しているものは何かについて話し合いが行われた。

  1. 企業であれば、トップの考え方の影響が多大である。同調圧力が強すぎることは、長いスパンで考えると、企業にリスクをもたらす。業績拡大期と業績減少・不振期では企業に必要とされる人材は異なる。同調圧力が少なく、多種多様な人材がいる企業は強いといわれる。但し、それができるかどうかは企業のトップに負うところが大きい。
  2. 一般論として日本人は欧米人にくらべてその場の空気に支配されやすいと云われる。その理由として「農耕民族である日本人は一人が突出することを嫌い、互いに協力して仕事をすることで、その成果を互いに分配するという社会形態に由来するのではないか」、また「日本人は古来より特定の宗教を持たず、八百万の神すなわち自然信仰が根底にあり、自然と折り合いをつけて生きること、すなわち回りの環境に合わせることが身についているのではないか」という意見もあった。