2014年11月8日に開催された第3回哲学カフェ

日時:2014年11月8日 13時~16時
場所:サロンド冨山房Folio
記録担当:伊﨑直輝、中村裕子、秋葉けんた

  1. 講師の話

テーマ:「情報と、どう付き合えばいいのか。

ゲスト講師:今泉浩晃氏

 今回、「情報と、どう付き合えばいいのか。」というテーマで哲学カフェを行った。今回、ゲスト講師として外部から今泉浩晃氏をお招きした。以下、氏の話の内容を要約する。

 

 実際情報とはどういったものであるのだろうか。まず人間は、情報が無いと生きていけない。その情報反応して生きているのが人間である。

  情報には、2通りある。ひとつは、自分の危険を察知する脅威的な情報。もうひとつは、生きるために得る機会的な情報。簡単に言うと、「危なかったら逃げる、いいものがあったら追っかける」ということ。

  狩猟社会→農耕社会→情報社会と変化。太古の昔から、人は狩猟・農耕(気象情報など)から情報を得ていた。少し前までは、山登りが得意な人は気象に関しても精通していた。最近は、あまり気象に詳しくない人も山に登るので、遭難者が増えるのではないか。

 森羅万象が情報であり、「読める人には読める」けれども「読めない人には読めない」。一昔前に流行ったKYという言葉は、そういった情報が読めない人のことかもしれない。逆に言うと、「情報を読めれば」そういうことにはならないのでは。

  現在は、情報から情報を生む社会。情報とどうつきあえばいいのか、という問いは今の時代だから出てくる問い。意図的に情報を操作する時代。「考える」とは、情報を扱う技術。「考える」は「問い」を持つこと。「問い」は「情報」に向けられる。「情報」をキャッチすることで、「これは何だ?」という「問い」が生まれる。キャッチしないと、問いは生まれない。「考える力」とは、情報を使えているかどうかにかかってくる。

 

  世の中は「疑問詞5w」でできている。いつ・どこで・だれが・なにをした。疑問詞という情報は知っているけど、この情報をどこまで使えているのだろうか。横軸は、時間と空間。誰にも共通しているもので、これは社会軸。縦軸は、それぞれで異なる。たとえば、日曜の午前中にテニスコートに集まれば、時間と空間は同じ。しかし、縦軸が変われば、内容は大きく変わる。ただテニスのあとのビールを楽しみに来た人はダラダラと打つだろうし、本気で選手を目指している人は真剣に取り組むはず。この縦軸は「主体軸」。そういう風に据えると、ものが見えてきた。「なぜ」の部分が行動を変える。

 

 情報は、頭の中にある。脳は情報の自動編集装置。都合のいいものを増幅し、都合の悪いもの(ノイズ)を削除。これで個性を作っている。

  「脳」の機能は4つ。無条件反射・条件反射・イメージの記憶・イメージの操作。「情報」の機能は4つ。感覚情報・体験情報・知識情報・論理情報。パブロフはこれを第一信号系・第二信号系と分けた。左側の「知識」「感覚」は空間点在型。「体験」「論理」は時系列線形型。意志系と反射系に分けられる。

  情報の量で圧倒的に多いのは感覚情報。普通の人にはキャッチされていないものも多い。体験情報(本来のデータ)はイメージがある。かつて論理情報だったものも、忘れてしまってバラバラになる知識にはなっているけど、論理情報でないものも多い。

  現代は、疑似体験による体験情報を膨らませることに成功した。活字から映像に変化し、情報量も増えた。情報が4つ→思考にも4つの形。リニア思考、ノンリニア思考、操作思考、反射思考。これが、現在の情報のあり方である。この情報の切り方から、ぼくは「マンダラート」を作った。生存環境はすべて「情報」(前提)。この「情報」を読める人、読めない人がいる。

  便利な機械やシステムがいろんなことを処理すると、人間は直接情報をキャッチしなくなる。その癖が付くと、キャッチできなくなる。ネット情報をキャッチしている人は多い。しかし、恣意的に変更できる情報は信頼できない。こういう時代だから、情報とどうつきあうか。これは膨大なテーマである。

  いろんな視点から「切る」ことで、その先が決まる。「切り方」を決めると、その先の「操作」の仕方も決まる。哲学カフェは、「問い」をたくさん持って帰るための場所。問いを持って帰れば、後でいくらでも考えられる。ここからは「哲学カフェ」とはについて、グループで話し合ってみてください。

 

2. 参加者からの質問

 

Q:マンダラートに順番がありますが、何故そういう作りにしたのですか?

A:考えるプロセスとして作りました。人間の脳は、前頭葉ではなく、中央の奥深くに古代脳がある。それをイメージしてみた。自分の周りには、前と後ろ、右と左、その間という八方向があり、その8つの区分だけは、人が目をつぶってでも察知できる空間。また、大脳生理学では短期記憶で覚えられるのは7-8コ位までとされている。だから8個にした。

 

Q:マンダラートのセルに入れる順番はあるのか。

A:あると言えばある、ないと言えばない。結果的に、この順番のほうが理解しやすいかと思った。このセルの順番は、(今泉さん的には)ある。

 

Q:曼荼羅という言葉について、仏教曼荼羅からとっているとおもうがこれは、適当なのか。

A:マンダ= 本質・真髄  ラ=成就する  というサンスクリット語。曼荼羅にアート=技術をつけてみました。

 

3. コメンテータのコメント

コメンテーター:人間中心設計推進機構の早川誠二氏

 

 興味深い話をお聞きできた。今日のテーマである「情報とどうつきあえばいいのか」。マンダラートの思考方法について、わかりやすく提供いただけた。

 「問い」を持つという発言にピンときた。「考えは問いから始まる」、「情報をつかえているかどうか」「考えるのは問いを持つこと」。これらの言葉の印象が強かった。

 「問いを持つ」。簡単なようで難しい。必要になる目的「ゴール」に向かって適切な問いをたてられるかが必要。「問い」を持つためには、情報をどう使えるか。情報も自分のために使おうと思うけど、必要な情報かどうかの、見極め。情報の「わかる化」「見える化」が重要。

  どういう風にすれば、情報が私にとってわかりやすい形になるのか。マンダラート1枚の資料で具現化してもらえた。視覚化。構造化して見せていただけた。

  もちろん、こういうことだけではなくて、体験として読みとる癖が落ちているんじゃないかと。私自身も、思考とか思考方法に走る傾向がある。もっとベーシックな情報のとりかた理解の仕方に気をつけないといけないと感じた。情報をとるだけじゃなくて、情報を理解して、新しい形につくりかえる。そして発信する。情報を取り入れ、情報をどう発信するのか。どういう形に発信するのかが問われているんじゃないか。